節税による課税の繰延について。

課税の繰延は「単なる」ものなのか?

マイクロ法人では様々な節税方法があり、これにより決算を赤字にすることができます。中小機構が提供している経営セーフティ共済や、社長個人に対する保険料の支払いは代表的なもので、どのような節税本でもかならず記載されています。

ただ、経営セーフティ共済の解約や、保険の解約返戻金などで会社に現金がもどったとき、税法上の益金になります。当期の損金がそれを相殺できるほど計上されていない場合、利益が出てしまうので、その時点で課税されてしまいます。この点を批判し、特に法人保険を利用した節税策は「単なる課税の繰延」という方もおられます。実際に計算例も出してインターネットに公開されている方もおりますが、そのすべてに納得することはできません。

経営セーフティ共済や社長保険によるリスク軽減

マイクロ法人は法人格を持ち、所有者である個人とは分離していますが、実際にはひとつのものです。仮に所有者である個人が病気になって働けなくなった場合、マイクロ法人もすぐに売上が立たなくなってしまいます。現在のように、世界的なコロナウィルスの影響がいつ治まるかわからない状況では、個人とマイクロ法人は常に不安を抱えたまま、生きていかざるを得ません。

経営セーフティ共済や解約返戻金はキャッシュを簿外に移転させています。必要な時はそれほど難しい手続きを経なくても、手元に戻すことができます。マイクロ法人でも固定費は発生しますので、売上が立たない場合、手元にキャッシュを戻した場合でも、必ずしも利益が出るとは限りません(繰越損失が累積している場合、それも利用できます)。

また社長個人に対する保険は、残された家族に対しての生活を保障する一つの方法でもあります。もちろん個人として死亡保険をかける、ということもできます。ただ、一般生命保険料控除額は小さいので、個人の課税所得を下げる効果は期待できません。しかし、個人・マイクロ法人とも不必要なキャッシュを流出させる必要はありません。マイクロ法人としてどの程度利益が出ているのか、またそれがどの程度続くのか、を考え総合的に判断する必要があります。

マイクロ法人でも一寸先は闇

「単なる課税の繰延」という言葉は、常に法人として利益が出続ける前提に立っているように思えます。しかしコロナウィルスが与える影響が示すように、常に一寸先は闇です。それを考えれば、個人と一体となっているマイクロ法人にとって、将来的な課税リスクがあっても、キャッシュを残す節税策の活用は、生き残りのために必要と思われます。

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