【出口戦略】小規模企業共済(中小機構)

小規模企業共済の概要と注意点

マイクロ法人や個人事業主の節税策として必ず挙げられるのが、中小機構が提供する小規模企業共済です。月額1,000円から70,000円までの掛金が全額「小規模企業共済等控除」となります。また、加入期間が長いほど受け取れる共済金の額が多くなります(共済金A・共済金Bの場合など)。ただし共済金A/共済金B/準共済金の要件に該当しない「任意解約」での「解約手当金」については、加入期間が240カ月=20年を下回ると掛金額を下回ります。この点、中小機構ホームページの説明がわかりづらく、そのまま文面をコピーしていると思われる記事もありますので、注意が必要です。

「小規模企業共済等控除」の対象となるのは、小規模企業共済・国民年金基金・企業型確定拠出型年金・個人型確定拠出型年金(Ideco)、そしてなじみのないかたもいるでしょうが、障害者の保護者のための、心身障害者扶養共済(しょうがい共済)です。控除の種類によっては、所得税と住民税で控除金額が異なるものがありますが(基礎控除・障害者控除など)、小規模企業共済等控除は控除金額が所得税と住民税で同額です。したがって、節税対策では計算しやすいと思います。

Idecoに比した小規模企業共済の優位点

上記のようにIdecoと小規模企業共済は節税ができ、かつ運用もできるという側面で共通しています。しかし、小規模企業共済の方がよりおトクな制度設計になっていると思えます。

たとえば、2022年からIdecoは65歳まで掛金を拠出できるようになるとの事ですが、65歳以降は拠出できず、小規模企業共済等控除には算入できません。しかし、小規模企業共済は(もっとも共済金額が高くなる)共済金Aに該当する「個人事業の廃業」や「法人の解散」を行わないかぎり、掛金を払い続けることで、所得控除額をふやすことができ、かつ共済金額もふやすことができます。

ということは、個人事業主の場合ですと、赤字もしくは休業状態でも、廃業届を中小企業に提出しなければ、掛金を払い続けることで、さきほどの2つのメリットを得る事ができるのです。もちろん、受け取り方(一括受け取りか分割受け取りか)や他の所得とあわせ、早いうちから年金と税金について勉強し、出口戦略をたてておく必要はあります。

小規模企業共済の貸付制度(コロナ対応含む)

また、Idecoでは掛金を担保に融資を受けることはできませんが、小規模企業共済は貸付制度があります。とくに2020年8月現在、コロナ禍で売上が落ちた共済契約者は、無利子かつ印紙不要で、掛金納付月数に応じた貸付を受けることができます。実際に融資を受けた場合、どの程度のスピードで振り込まれるか不明ですが、かなり有利な制度である、といえると思います。

小規模企業共済の原資はどうするか。

出口戦略で述べた内容で、問題となるのが掛金の原資です。個人事業なりマイクロ法人で売上が立つなり、潤沢に手元資金が残っている必要があります。自分の死後に残すお金を心配しないですむ場合、公的年金・個人年金を原資にまわすか、さきほどの融資制度と活用することも考えられます。必要な原資は、その時その時で、自分や家族がどのていどお金が必要かによって、調達方法が異なってくるでしょう。事業がうまくまわっていて、キャッシュを運んでくれていることが一番ですが。

原資については、非現実的に感じられるかたも多いかもしれません。しかし、人生100年時代と言われる現在、長生きすることのリスクを考えると、制度のさまざまな設計を理解することは、とても大事だと思います。理解しないと、自分がどのようなことができるのか、案を考えることはできません。上記の試案が、みなさんの考えるきっかけになれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました